2016年 01月 29日
投資ブロガーのFOYとはあまりにも対照的なモーニングスターFOY。結局どういうのが良いファンドだと言っているんだ? |
去る1月15日、「投信ブロガーが選ぶFund of the year2015」の結果発表が行われました。
栄えある1位に輝いたのは<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド。
次点が三井住友DC全海外インデックスファンド、3位がVT、以下もリンク先にあるとおり低コストインデックス系列がずらり。
例外的にひふみ投信や結い2101がやや高コストですが、高いとは言ってもせいぜい信託報酬年率1%内外で、おのおの投資理念の一貫した実践とリターン実績とがそれなりに支持を集めるファンド。
上位入賞ファンドのどれも長期投資による資産形成に使うのに最適の、まさに綺羅星といってよいラインナップです。
さて、実はモーニングスター社でも、同じくFund of the Yearと称する表彰を行っています。
その結果が、1月28日にウェブサイトで確認できました。
Fund of the year 2015
……お、おう。
なんとも困惑させられる受賞ファンド群です。
各分野ごとの最優秀賞受賞ファンドの信託報酬を見てみますとこんな感じになっております。
国内株式大型部門 スパークス・新・国際優良日本株ファンド『愛称:厳選投資』 1.88%
国内株式中小型部門 三井住友・げんきシニアライフ・オープン 1.63%
国際株式型部門 グローバル・ヘルスケア&バイオ・ファンド『愛称:健次』 2.39%
債券型部門 コーポレート・ボンド・インカム(為替ノーヘッジ型)『愛称:泰平航路』 1.07%
REIT型部門 フィデリティ・USリート・ファンド B(為替ヘッジなし) 1.61%
バランス(安定)型部門 東京海上・円資産バランスファンド(毎月決算型)『愛称:円奏会』 0.92%
バランス(安定成長)型部門 スマート・ラップ・ジャパン(毎月分配型) 1.57%
バランス(成長)型部門 ラップ・コンシェルジュ(成長タイプ) 1.96%
目を覆いたくなるような高コストが並んでいます。
優秀賞まで目を広げてみても、低コストインデックスファンドは全く入っていません。
選考基準を見てみますと、基本的には1年間の運用実績を定量・定性評価して選考しているようで、それに則ると確かにこういう結果になってしまうのでしょう。
なんといっても、インデックスファンドというのは「平均点を確実に取り続けていく」運用手法ですから、1年程度で切り取られて数値化されるとどうやったって上位に入ることはありません。
それは仕方ないのですが、そうやって出てきた結果がこんなどう見ても長期投資に使えっこないファンド群になるのを見せられると、かなり戸惑わされます。
さて、ここに、実に良い指摘をした書物があります。
正解はこちらです。
(朝倉智也「(新版)投資信託選びでいちばん知りたいこと」(ダイヤモンド社 2013年9月27日(紙)・同30日(kindle)kindle版位置番号493付近)
朝倉智也というのは、いうまでもなく、モーニングスターの社長その人です。
その人が、この引用した所では、「過去の実績が将来の成果とは結び付かないこと」「コストの水準を重視すべきこと」を的確に指摘しています。
また、私も参加したETFカンファレンスなどの場において低コストの投資を啓蒙しています。
その同じ人が経営する会社では、こういう1年程度の期間で区切った好成績ファンドに表彰を与えています。
「ある特定期間で好成績を挙げたファンドは、それ以降の成績にもそれなりに相関(逆相関でもいいかもしれませんが)した成績を挙げるはずだ」という前提に立った上でなら、1年限りのリターンで優劣をつけて表彰という形で大々的にアピールしても、投資家にとっては有益な情報になるでしょう。
しかし、どうも朝倉氏自身は、引用した著書の箇所を見るとそういう前提を取る立場には立っていないように見えます。「過去の実績が必ずしも将来のパフォーマンスを保証してくれるわけではありません」なんですから。
となると、「この表彰は、将来の投資成果改善を追求する投資家にとってはほとんど何の益もない情報である」という認識に立った上で、その無益な情報を発信するためにわざわざ人手や経費を割いてパフォーマンスの分析や順位付けを行なってみせているということにならざるを得ません。
そうだとするとなかなかに矛盾した行動です。そんな無駄な作業を社員を使ってやっている暇に、もう少し違う活動ができる気もします。
あるいは、この1年限りのパフォーマンスに着目しコストを全く度外視した表彰こそ有意義な情報だと信じて表彰しているのでしょうか。
(条件指定検索画面でファンドオブザイヤーの入賞実績を検索条件にできるところを見ますと、それなりに有意義な情報として扱っているようにも見えます)
そうだとすると、では書籍やセミナーで言っていることは何なのかということになります。
別に真実どちらの立場を取っているにしても一貫しているのなら宜しいんですが、こんな風に場所によって違う立場を使い分けられると何を信じてよいものやら困惑させられます。
市井のブロガーならいいですが、日本を代表する格付け機関モーニングスターの名を、また投資初心者向けの書籍の著者・セミナーの講演者の名を持っているんですから、その影響力をかんがみて、低コストなファンドが良いのか高コストでも一定期間のパフォーマンスが良好なファンドが良いのか、その基本認識くらいはどちらか一貫させたほうが、その信頼性や権威を貶めることにならず良いのではないかと思います。
ちなみにこんな声も頂きました。
一瞬だけ活躍して表彰されても、その後コンスタントに続く人(チーム)もあれば一瞬で没落していってしまう人(チーム)もあります。あわや三冠王だった2012年阿部慎之助、三役で安定した勝ち星を続けていて大関昇進が認められた豪栄道、この辺はその後は惨憺たる有様になってしまっています。MLB通算何本塁打とか何十勝何百勝とかいう触れ込みで取ってきた助っ人が単なる扇風機やバッティングピッチャーにしかならないこともあります。
監督や球団フロントがそんな(現在使い物になっていない)選手を過去の実績だけで贔屓起用したり高待遇の契約したりするべきでないのと同様、我々投資家としても過去実績が良くて表彰されたというだけで現在・将来使い物になるかどうかも分からないファンドを使うことのないようよく注意しなければなりません。
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栄えある1位に輝いたのは<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド。
次点が三井住友DC全海外インデックスファンド、3位がVT、以下もリンク先にあるとおり低コストインデックス系列がずらり。
例外的にひふみ投信や結い2101がやや高コストですが、高いとは言ってもせいぜい信託報酬年率1%内外で、おのおの投資理念の一貫した実践とリターン実績とがそれなりに支持を集めるファンド。
上位入賞ファンドのどれも長期投資による資産形成に使うのに最適の、まさに綺羅星といってよいラインナップです。
さて、実はモーニングスター社でも、同じくFund of the Yearと称する表彰を行っています。
その結果が、1月28日にウェブサイトで確認できました。
Fund of the year 2015
……お、おう。
なんとも困惑させられる受賞ファンド群です。
各分野ごとの最優秀賞受賞ファンドの信託報酬を見てみますとこんな感じになっております。
国内株式大型部門 スパークス・新・国際優良日本株ファンド『愛称:厳選投資』 1.88%
国内株式中小型部門 三井住友・げんきシニアライフ・オープン 1.63%
国際株式型部門 グローバル・ヘルスケア&バイオ・ファンド『愛称:健次』 2.39%
債券型部門 コーポレート・ボンド・インカム(為替ノーヘッジ型)『愛称:泰平航路』 1.07%
REIT型部門 フィデリティ・USリート・ファンド B(為替ヘッジなし) 1.61%
バランス(安定)型部門 東京海上・円資産バランスファンド(毎月決算型)『愛称:円奏会』 0.92%
バランス(安定成長)型部門 スマート・ラップ・ジャパン(毎月分配型) 1.57%
バランス(成長)型部門 ラップ・コンシェルジュ(成長タイプ) 1.96%
目を覆いたくなるような高コストが並んでいます。
優秀賞まで目を広げてみても、低コストインデックスファンドは全く入っていません。
選考基準を見てみますと、基本的には1年間の運用実績を定量・定性評価して選考しているようで、それに則ると確かにこういう結果になってしまうのでしょう。
なんといっても、インデックスファンドというのは「平均点を確実に取り続けていく」運用手法ですから、1年程度で切り取られて数値化されるとどうやったって上位に入ることはありません。
それは仕方ないのですが、そうやって出てきた結果がこんなどう見ても長期投資に使えっこないファンド群になるのを見せられると、かなり戸惑わされます。
さて、ここに、実に良い指摘をした書物があります。
将来のパフォーマンスを予測するさい、多くの個人投資家は、過去の運用実績、リスクの大きさ、ファンドマネジャーの経歴などに注目すると思います。もちろん、どれも大切な情報ではありますが、これらはあくまでも過去の実績。どれほど精緻に予測をしても、過去の実績が必ずしも将来のパフォーマンスを保証してくれるわけではありません。さて、この引用文章は誰の何という本が出典でしょうか。
では、コストは?そうです。パフォーマンスやリスクの予測とは違い、コストは投信を購入する時点で、毎年どれだけかかるのかをあらかじめ把握できます。これから見ていくように、コストの多寡は私たちの手元に残る最終的な運用益の額に大きく影響するので、決して軽視することはできません。
正解はこちらです。
(朝倉智也「(新版)投資信託選びでいちばん知りたいこと」(ダイヤモンド社 2013年9月27日(紙)・同30日(kindle)kindle版位置番号493付近)
朝倉智也というのは、いうまでもなく、モーニングスターの社長その人です。
その人が、この引用した所では、「過去の実績が将来の成果とは結び付かないこと」「コストの水準を重視すべきこと」を的確に指摘しています。
また、私も参加したETFカンファレンスなどの場において低コストの投資を啓蒙しています。
その同じ人が経営する会社では、こういう1年程度の期間で区切った好成績ファンドに表彰を与えています。
「ある特定期間で好成績を挙げたファンドは、それ以降の成績にもそれなりに相関(逆相関でもいいかもしれませんが)した成績を挙げるはずだ」という前提に立った上でなら、1年限りのリターンで優劣をつけて表彰という形で大々的にアピールしても、投資家にとっては有益な情報になるでしょう。
しかし、どうも朝倉氏自身は、引用した著書の箇所を見るとそういう前提を取る立場には立っていないように見えます。「過去の実績が必ずしも将来のパフォーマンスを保証してくれるわけではありません」なんですから。
となると、「この表彰は、将来の投資成果改善を追求する投資家にとってはほとんど何の益もない情報である」という認識に立った上で、その無益な情報を発信するためにわざわざ人手や経費を割いてパフォーマンスの分析や順位付けを行なってみせているということにならざるを得ません。
そうだとするとなかなかに矛盾した行動です。そんな無駄な作業を社員を使ってやっている暇に、もう少し違う活動ができる気もします。
あるいは、この1年限りのパフォーマンスに着目しコストを全く度外視した表彰こそ有意義な情報だと信じて表彰しているのでしょうか。
(条件指定検索画面でファンドオブザイヤーの入賞実績を検索条件にできるところを見ますと、それなりに有意義な情報として扱っているようにも見えます)
そうだとすると、では書籍やセミナーで言っていることは何なのかということになります。
別に真実どちらの立場を取っているにしても一貫しているのなら宜しいんですが、こんな風に場所によって違う立場を使い分けられると何を信じてよいものやら困惑させられます。
市井のブロガーならいいですが、日本を代表する格付け機関モーニングスターの名を、また投資初心者向けの書籍の著者・セミナーの講演者の名を持っているんですから、その影響力をかんがみて、低コストなファンドが良いのか高コストでも一定期間のパフォーマンスが良好なファンドが良いのか、その基本認識くらいはどちらか一貫させたほうが、その信頼性や権威を貶めることにならず良いのではないかと思います。
ちなみにこんな声も頂きました。
@an_bow スポーツの最優秀賞みたいなものと思えばいいのではないかと考えてます。去年の最優秀選手賞であって、今年以降に活躍するかとは別問題と。(そもそもリタイヤしてるかも)
— 吊ら男 (Forza Milan) (@tsurao) 2016, 1月 28
たしかにその通り、相通ずるものは大いにありそうです。一瞬だけ活躍して表彰されても、その後コンスタントに続く人(チーム)もあれば一瞬で没落していってしまう人(チーム)もあります。あわや三冠王だった2012年阿部慎之助、三役で安定した勝ち星を続けていて大関昇進が認められた豪栄道、この辺はその後は惨憺たる有様になってしまっています。MLB通算何本塁打とか何十勝何百勝とかいう触れ込みで取ってきた助っ人が単なる扇風機やバッティングピッチャーにしかならないこともあります。
監督や球団フロントがそんな(現在使い物になっていない)選手を過去の実績だけで贔屓起用したり高待遇の契約したりするべきでないのと同様、我々投資家としても過去実績が良くて表彰されたというだけで現在・将来使い物になるかどうかも分からないファンドを使うことのないようよく注意しなければなりません。
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by an_bow_umibune
| 2016-01-29 02:39
| 変なイベント